Windows 10 や 11 で PDF を開こうとしたときに「このファイルはコンピューターに問題を起こす可能性があります」と警告が出てプレビューできない──そんな経験はありませんか。
実はこの症状、PDF自体の不具合ではなく、Windows が「インターネット由来(Mark of the Web)」と判断したことが原因で起きています。
本記事では、単発ファイルのブロック解除からフォルダー単位の一括解除、Outlook・Adobe・エクスプローラー別の原因切り分けまで、順を追って詳しく解説します。
さらに、企業管理PCやセキュリティ設定による制限の見極め方、最終手段となるコマンド修復方法も紹介。
これを読めば「PDFプレビューができない」問題を最短で解決できます。
PDFがプレビューできない原因は?
この章では、PDFのプレビューが突然できなくなる原因を整理します。
最近多いトラブルの背景には、Windowsのセキュリティ機能「インターネット由来(Mark of the Web)」が関係しています。
Windowsの「インターネット由来(Mark of the Web)」とは
Windows 10や11では、Webサイトやメールから取得したファイルに自動で「インターネット由来」という印が付きます。
これはMark of the Web(MOTW)と呼ばれる仕組みで、外部から得たファイルを安全に扱うための保護機能です。
ただし、この印が残っていると、PDFやOfficeファイルなど一部の形式ではプレビューや編集が制限されることがあります。
状態 | 意味 |
---|---|
Mark of the Webあり | インターネットやメール経由で入手。セキュリティ制限が有効。 |
Mark of the Webなし | ローカル作成または信頼済みファイル。制限なし。 |
特に2023〜2025年のWindows更新では、この判定がより厳格化され、従来は開けていたPDFでも「このファイルはコンピューターに問題を起こす可能性があります」という警告に置き換わるケースが増えています。
なぜ最近になってエラーが増えたのか
これは、Microsoftがセキュリティ強化を進めているためです。
以前は「Mark of the Web」が付いていてもプレビューできる場合がありましたが、最新の更新でエクスプローラーやWebView2(プレビューエンジン)側の制御が強化されました。
その結果、PDFが「外部由来」と判断されるだけで自動的にブロックされるようになっています。
つまり、問題はPDF自体ではなく「安全マークの扱い」が原因なのです。
まず試すべき最短の直し方(単発ファイルのブロック解除)
ここでは、単発のPDFでプレビューできないときの最も手早い直し方を紹介します。
たった数クリックで解除できるので、まずこの方法を試すのが確実です。
右クリックで「ブロックの解除」を行う手順
以下の手順で、Mark of the Webを削除して安全にプレビューできるようにします。
手順 | 操作内容 |
---|---|
1 | 対象のPDFを右クリックし、[プロパティ]を開きます。 |
2 | [全般]タブ下部にある「セキュリティ」枠で[ブロックの解除]にチェックを入れます。 |
3 | [適用]をクリックし、ウィンドウを閉じます。 |
これでエクスプローラーのプレビューや既定アプリで開けるようになります。
単発ならこの方法だけで解決することが多いです。
「ブロック解除」が表示されない場合の確認ポイント
もし「ブロック解除」チェックボックスが表示されない場合、そのPDFはすでに信頼済みの可能性があります。
以下のようなケースを確認してみてください。
- ZIPファイルから展開していないか(展開時にMOTWが引き継がれることがあります)。
- ネットワーク共有フォルダー上に置いていないか。
- すでに解除済みで別の原因(PDFアプリやWebView2の不調など)があるか。
これらを確認してもプレビューできない場合は、次章の「フォルダー内PDFが全てダメなときの対処」へ進みましょう。
フォルダー内のPDFが全てプレビューできないときの対処法
単発ファイルのブロック解除で直らない場合、フォルダー内のPDFすべてに「Mark of the Web(MOTW)」が付いている可能性があります。
この章では、複数ファイルをまとめて解除する方法を紹介します。
PowerShellで一括解除する方法
複数PDFを一つずつ解除するのは手間ですよね。
そんなときはPowerShellを使うのが便利です。
以下の手順で、フォルダー配下のPDFすべてからMOTWを削除できます。
手順 | 操作内容 |
---|---|
1 | Windowsのスタートボタンを右クリックし、「ターミナル(管理者)」または「PowerShell(管理者)」を開きます。 |
2 | 次のコマンドを入力して実行します。 |
Get-ChildItem "D:\Downloads\PDF" -Recurse -Filter *.pdf | Unblock-File
フォルダーのパス(上記例では D:\Downloads\PDF
)は、自分の環境に合わせて変更してください。
このコマンドは指定フォルダー配下のPDFすべてに対して「ブロック解除」を実行します。
コマンド実行後の確認手順と注意点
コマンドを実行したら、エクスプローラーを再起動してプレビューを確認します。
確認ポイント | 操作内容 |
---|---|
エクスプローラーの再起動 | taskkill /f /im explorer.exe & start explorer.exe を実行するか、ウィンドウを閉じて再度開く。 |
PDFの再プレビュー | 任意のPDFを選択して、右側のプレビューウィンドウで表示されるか確認。 |
注意: 信頼できる入手元のPDFにだけ実行してください。
不明なファイルに対してブロック解除を行うと、マルウェア感染リスクが高まります。
状況別の追加対処法
「ブロック解除」をしても直らない場合や、特定のアプリでのみ発生する場合は、状況ごとの原因を切り分けましょう。
ここでは3つの代表的なケースを紹介します。
エクスプローラーでプレビューできない場合
まず、プレビューウィンドウが有効か確認します。
エクスプローラーのメニューから[表示]→[プレビューウィンドウ](ショートカット:Alt + P)をオンにしてください。
また、ZIPから展開したばかりのファイルは引き続きMOTWが残っていることがあります。
その場合は、C:\Users\<ユーザー名>\Documents などの信頼フォルダーに移動し、改めて「ブロック解除」を試しましょう。
確認内容 | 対処方法 |
---|---|
プレビューウィンドウが無効 | Alt + Pで有効化 |
既定アプリの不一致 | [設定 → アプリ → 既定のアプリ → .pdf]で再設定 |
WebView2(Edge)不調 | Microsoft Edgeを修復または更新 |
Outlookの添付ファイルで警告が出る場合
Outlookの添付PDFを開くと「コンピューターに問題を起こす可能性があります」と表示される場合があります。
この場合は、必ず一度「名前を付けて保存」してから開きましょう。
保存後、右クリック → プロパティ → 「ブロック解除」で解消するケースが多いです。
また、Outlookの設定でもプレビューを制御できます。
設定箇所 | 内容 |
---|---|
ファイル → オプション → トラストセンター | 「添付ファイルのプレビューを有効にする」にチェック |
ファイルのプレビュー オプション | PDFプレビューアーがオンになっているか確認 |
なお、企業管理PCでは管理ポリシーでプレビューが制限されている場合もあります。
この場合はIT管理者に相談が必要です。
Adobe Acrobat/Readerでプレビューが不安定な場合
Adobe AcrobatやReaderでプレビューが白紙になる場合は、バージョンの更新や一時的な保護モードの設定確認を行います。
原因 | 対処法 |
---|---|
旧バージョンを使用中 | 最新バージョンへアップデート |
保護モードが干渉 | [編集 → 環境設定 → セキュリティ(拡張)]で保護モードを一時的に無効(検証後は戻す) |
既定アプリ設定の不整合 | 一度Edgeを既定に→再度Acrobatを既定に設定し直す |
アプリの再設定と更新で改善するケースが多いため、まずはこの2点を試してみてください。
それでも直らない場合のチェックリスト
ここまでの手順を試してもプレビューできない場合は、原因がファイル以外にある可能性があります。
この章では、より深く切り分けるためのチェックポイントをまとめました。
ファイル・アカウント・システムの切り分け方
まず、問題がどこにあるのかを特定することが重要です。
下の表の手順に沿って確認していきましょう。
確認項目 | 内容 | 判断の目安 |
---|---|---|
他のPDFで再現するか | 別のPDFを開いてみる | 再現しなければ特定ファイルの問題 |
別ユーザーで再現するか | 新しいWindowsユーザーを作成し再現テスト | 再現すればシステム側の問題 |
ZIP展開の有無 | ZIPから展開したPDFを使用しているか | ZIP経由ならMark of the Webが残存の可能性 |
こうした確認を行うことで、「MOTWが残っているだけ」なのか「アプリや設定が破損している」のかを見分けやすくなります。
ファイル単体で再現しない場合は、ほぼ確実にアプリやシステム設定が原因です。
企業管理PCの場合の考えられる制限
会社や学校など、組織が管理するPCではセキュリティポリシーによってプレビュー機能が制限されていることがあります。
以下はよくある制限例です。
ポリシー項目 | 内容 |
---|---|
Zone情報保存の強制 | ファイルのインターネット属性を常に保持する設定 |
SmartScreen/ASR(攻撃面削減) | 未署名ファイルを自動的にブロックする仕組み |
Outlookプレビュー禁止 | 添付ファイルのプレビューを組織的に無効化 |
こうした設定は個人では変更できないため、社内のIT管理者に相談してください。
無理にレジストリやポリシーを変更するのはNGです。
組織全体のセキュリティを損なう可能性があります。
安全にブロック解除するための注意点
Mark of the Webの解除は便利ですが、扱いを誤るとセキュリティリスクを招きます。
ここでは、安全にブロック解除を行うための基本ルールを紹介します。
信頼できるPDFかどうかを見極める方法
解除する前に、PDFが本当に安全かどうかをチェックしましょう。
確認項目 | 具体的な方法 |
---|---|
送信元の信頼性 | 知っている相手・正式な配布元か確認 |
ウイルススキャン | VirusTotalなどのオンラインスキャンサービスを利用 |
ファイル名・拡張子 | 「.pdf.exe」など不審な二重拡張子でないかチェック |
また、少しでも不安がある場合は、オフライン環境の検証用PCで開くのが安全です。
安全確認を怠らないことが最も重要です。
セキュリティを保ちながらトラブルを回避するコツ
ブロック解除はあくまで一時的な対処と考えましょう。
原因を特定したら、元に戻すことを意識するのがポイントです。
- 問題が解決した後は、保護モードなどのセキュリティ設定を元に戻す。
- 定期的にWindows Updateを適用し、最新の状態を維持する。
- 信頼できるクラウドストレージや共有フォルダー経由でファイルをやり取りする。
こうした基本を守ることで、今後同じ問題を繰り返すリスクを大きく減らせます。
「解除しっぱなし」にしない運用が、安全と利便性の両立につながります。
困ったときの最終手段
ここまでの対処を試してもプレビューが復旧しない場合、Windowsのシステム自体が不調になっている可能性があります。
この章では、最終手段として試すべき2つの操作を紹介します。
システムファイル修復コマンドの実行
Windowsのシステムファイルに破損があると、PDFプレビューの動作にも影響が出ることがあります。
この場合は、以下のコマンドを順に実行してシステムを修復しましょう。
コマンド | 目的 |
---|---|
sfc /scannow |
システムファイル全体の整合性をチェック・修復 |
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth |
Windowsイメージの破損を修正 |
これらを管理者権限のPowerShellまたはコマンドプロンプトで実行し、完了後にPCを再起動します。
Windowsの内部修復でプレビュー機能が復活することも多いです。
エクスプローラーを再起動する手順
設定変更やコマンド実行後にプレビューが反映されない場合、エクスプローラーを再起動してみましょう。
操作は非常に簡単です。
操作内容 | コマンド |
---|---|
エクスプローラーの強制終了→再起動 | taskkill /f /im explorer.exe & start explorer.exe |
この操作でプレビュー機能がリセットされ、設定変更が正しく反映されることがあります。
それでも改善しない場合は、Windows Updateの適用や既定アプリの再設定も試してみましょう。
まとめ:PDFプレビュー問題の最短解決ルート
ここまでの内容を振り返りながら、最も効率的な解決の流れを整理します。
PDFがプレビューできないときは、以下の手順を順番に確認すればほとんどのケースを解決できます。
ステップ | 対処内容 |
---|---|
1 | プロパティ → 「ブロック解除」をチェック(単発ファイル) |
2 | PowerShellで一括解除(複数PDF) |
3 | アプリ・プレビュー設定を見直し(Edge/Adobe/Outlook) |
4 | システム側の切り分け(他ユーザー・他PDFで再現確認) |
5 | 最終手段としてSFC/DISMを実行 |
直近のWindows更新により、インターネット由来扱いのPDFがブロックされる事例は増えています。
しかし、ほとんどのケースでは「ブロック解除」か「Unblock-File」コマンドで即解決可能です。
それでも解消しないときは、既定アプリの修復やセキュリティポリシーの確認を順に行いましょう。
手順を焦らず順番に進めることが、最短の解決ルートです。